Google Meet がカクつく、音声が途切れる、授業が止まってしまう…。
これは GIGA 環境では誰もが直面しうる課題です。
しかし、この問題の多くは、学校ネットワーク特有の構造(多人数同時接続)に起因しています。
担当者の力量や設定ミスと断定できるものではなく、根本的に発生しやすい環境的要因があります。
本記事では、緊急時に最速で授業を復旧させる方法から、根本解決に必要な専門的設定までを、危険度の低い順に整理して解説します。
【まずこれだけ】緊急時に授業を止めない応急処置
授業がすでに止まっている時は、以下の 3 つを最優先で行います。
1. Meet の画質設定を低画質(360p 以下)に変更
教員・児童生徒へ一斉に指示する。
2. 映像をオフにし、音声のみで継続
映像を切るだけで帯域使用量は大幅に減少します。
3. バックグラウンド通信を止める
クラウド同期・大容量アップロード・自動更新が同時に走っていないか確認。
問題の切り分け(原因調査の最短ルート)
Meet の遅延は「端末側」か「ネットワーク側」かで対策が大きく変わるため、最初に切り分けます。
切り分け1:接続端末数が原因か
- 特定の時間帯だけ遅い → 多人数同時接続による輻輳が濃厚
- 1人で使っている時も遅い → 回線、ルーター、APのボトルネックの可能性
切り分け2:速度測定
実効速度が契約値の半分以下ならネットワーク機器の性能不足が疑われます。
切り分け3:アクセスポイント(AP)
特定教室のみ遅い場合、AP過負荷やPoEスイッチの速度(100Mbps)制限の可能性。
ステップ別|危険度の低い順に「確実に効果が出る」対策
【手順1】Google Workspace 管理コンソール設定(最も安全)

- Google Workspace 管理コンソールへログイン
- アプリ → Google Meet
- ・帯域制限
・画質低下設定
を組織単位で設定する。
これだけで混雑時間帯の帯域消費を大幅に抑えられます。
【手順2】校務用PC(Windows)の QoS 設定確認(安全な範囲)

※ここは「コマンドでは確認できない」という指摘に基づき修正済みです。
Windows 端末の帯域が不必要なポリシーで制限されている場合、Meetに影響が出ます。
以下の方法で QoS ポリシーが設定されていないか確認します。
ローカル PC での確認方法
- 「Windowsキー + R」
gpedit.mscと入力して開く- 以下の階層へ移動
コンピューターの構成 > Windows の設定 > QoS ポリシー
ドメイン環境の場合(GPO管理)
- サーバーで「グループポリシー管理」を開く
- 対象 OU に適用されている GPO を確認
- コンピューターの構成 > Windows の設定 > QoS ポリシー
に帯域制御が設定されていないか確認
確認すべきポイント
- Meet の通信を不必要に制限していないか
- 校務支援システムなどが優先度高に設定されていないか
- 帯域制限の数値が過度に小さくないか
※この手順では端末が遅延の原因かどうかを判定できます。
【手順3】スイッチングハブ(L2/L3)設定の確認(最も高度で危険)

⚠ 注意
【最重要】設定変更前に、必ず現在のスイッチ設定(コンフィグ)をファイルにバックアップしてください。
失敗した場合、校内ネットワークが完全に停止します。
学校のネットワーク遅延の根本原因の多くは、
スイッチ設定やL2構造の問題にあるため、ここは最も重要です。
1. QoS設定
Meet(TCP/UDP 443)の優先度を「高」に設定。
特に多数のAPを収容する上位スイッチで重要。
2. VLAN分割
- 校務ネットワーク
- 学習(Chromebook)ネットワーク
- ゲストネットワーク
が同一 VLAN になっていると輻輳が頻発します。
VLANで分離すると混雑が劇的に減少します。
3. IGMP Snooping 有効化
一斉配信サービスやマルチキャスト系アプリがある学校では必須。
よくある学校特有の原因と対策

校務システムのバックグラウンド同期
→ QoS で優先度を下げる
スイッチの100Mbpsポートの存在
→ AP が複数台接続されると帯域不足
→ 1GbpsポートやPoE+対応に更新
APの過負荷
→ 接続端末数の偏り
→ APの追加配置やチャネル設計の見直しが必要
それでも解決しない場合に検討すること
1. 時間帯の分散
授業開始時刻を 5〜15分ずつずらす。
2. 回線増強
上位回線の帯域不足が原因の場合は ISP 回線の増設。
3. コア機器の更新
古いルーター・L3スイッチがボトルネックになっているケースは多い。
再発防止に必要な運用改善
トラフィック監視
スイッチの SNMP 監視で「帯域70%超」でアラートを出す。
VLAN標準化
校務・学習・ゲストの分離を学校標準に。
APのキャパシティ管理
1教室あたりの最大接続数を把握し、必要に応じて追加。
まとめ|最短で復旧し、根本から改善するために
- 緊急時は 画質低下 → 音声のみ が最速の対症療法
- QoS と VLAN が根本改善の鍵
- スイッチ設定は必ず バックアップ取得後に操作
- 問題は担当者の力量ではなく、学校特有の多人数同時接続構造が主因
学校 ICT は非常に複雑ですが、確実に改善できる領域です。
一つずつ整えていくことで、オンライン授業の安定性は大きく向上します。


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